情報ハブ株式会社 加藤 良平様より、アート情報を配信するメールマガジンにて個展のご感想を紹介いただきました。
以下紹介文です。
ーーーーー記ーーーーー
高原 絵里 さんの作品『ゆらぎ - La fluctuation』に心惹かれて画廊に足を運びました
東京・銀座のOギャラリーUP・Sで9月22日まで開催されていた、
『高原 絵里 展 明るい温度 - La temperature de clair 』に足を運びました。
ギャラリーからお送りいただいた案内はがきに、作品が一枚掲載されていました。
縦長の画面の上部には、ギラギラとエネルギーを発散させる太陽をそのもののような明るい輪。ただしその周囲の光の描き方からすると、ふわふわと漂う光源のようにも見えます。そのすぐ下、画面のほぼ全体にそびえるのは山でしょうか。山のてっぺんと太陽(光源)とはほぼ重なっています。そして山頂付近から滝のようなものが一気に流れ落ち、そのまま下部の川のような紺色へとつながっています。滝以外の山肌は、黄緑ないし緑が基調ですが、よく見ると白っぽい点や細線がちりばめられています。
作家からは事前にこんなメッセージ(コンセプト)をいただいています。
内的な心象風景をモチーフにしています。実際の風景を見た時の経験や、感情が起こる時の感覚、夢でみたもの、物語から受け継いだイメージ、それらをないまぜにして打ち直し表現としています。個を降りた先にある、多くの人と共有できる本質を掴み取りたくて制作に取り組んでいます。
『ゆらぎ - La fluctuation』を見て最初に連想した画家は、オディロン・ルドンやギュスターブ・モローでした。どちらも象徴主義という切り口で紹介されることが多い画家です。高原さんのメッセージにあるような「内的な心象風景」というのも、その象徴主義とどこかオーバーラップしているといえそうです。技法としては油彩とテンペラの混合とのこと。ただし作品によっては羊皮紙にテンペラ技法で描いたものもあるようです。
会場で話を伺うことができました。「元々油彩を専攻していたが、それだけだとどうしてもかたまり的な質感が中心になってしまう。もっと細い線の存在感や軽やか透明感を表現するために、テンペラは欠かせない手法となっている」。
なるほど、他にも構図の中心として光源的なものを描きこんだ作品は多いのですが、そのどれもが力強さだけでなくどこか繊細なニュアンスを持っているのは、テンペラによる細かい点や線の効果なのでしょう。また『抱擁』や『銀のうち』など寒色系の作品でも、澄んだ水の軽やかなゆらぎを表現するのに、やはりテンペラが一役買っている感じです。
「ルドンやモローも確かに好きだけど、一番影響を受けたのはセガンティーニ」というコメントにも、大いにうなずかされました。ただしセガンティーニは実在の山村の風景をモチーフにしています。高原さんはそれを心象風景に、また海を連想させる風景に広げたという点で、新しい魅力を生み出したといえると思います。全体に上品な色使いも、深く印象に残りました。
~『ゆらぎ - La fluctuation』は以下のサイトで見られると思います
https://atelieri.jimdo.com/